【PMDD】月経前不快気分障害とは
PMS(月経前症候群)という言葉はここ数年でとても有名になりましたが、PMDD(月経前不快気分障害)という言葉は聞いたことがない人も多いかもしれません。PMSの女性の約3〜8%が該当すると言われています。
PMDD(月経前不快気分障害)とは
生理2週間前ごろから心身が不安定になって辛い状態を『月経前症候群(PMS)』といいますが、その中でも精神の不安定さが際立って強くでてしまう重症例は『月経前不快気分障害(PMDD)』と区別されています。
こころみ医学元住吉こころみクリニック【内科・呼吸器内科・心療内科】
PMSは近年では女性で知らない人はいないレベルの認知度ですね。生理の始まる1週間くらい前から心身に不快な状態が起こることを言います。
一方、PMDDは精神の不安定さが際立って強いことが特徴です。といっても症状は様々です。
- 感情の起伏がいつもより激しい
- 抑うつ状態になる
- イライラして怒りっぽく、衝動を抑えられない
- 不安や緊張を感じる、高ぶっている、いらだっているという感覚がある
- 乳房の痛みや張り、関節痛や筋肉痛、頭痛、むくみ、体重増加などの身体症状がある
特にPMDDでは、非常に苦痛が強く、仕事や学校などといった社会的生活・日常生活で大きな支障をきたします。仕事ができなくなったり、休んでしまったり、家庭でもいつもできていた家事ができなくなるといった症状が出ます。
2013年になってようやくアメリカで診断基準が作られたため、日本では最近ようやく認知度が上がってきているような状況です。
以下のリンク先の「月経前不快気分障害(PMDD)の診断基準(DSM-5)」という表で簡易チェックができるので当てはまるかどうかまずはチェックしてみるといいでしょう。
症状
症状について詳しく調べていきます。
症状が出る期間
長くて生理の始まる2週間前くらいから始まり、生理終了に向かって軽減していくというのが基本です。生理が始まったときから症状が軽減するケースもあります。
特徴
生理周期と症状の強弱があきらかに連動しているという特徴があります。
うつ病などの人は気分や体調に波があるので気づきにくいかもしれませんが、生理前に必ず症状がひどくなるようであれば、当てはまる可能性があります。
原因
原因や病態についてはまだ完全には明らかにはなっていません。ただ、月経周期で女性ホルモンの量が変動するため、その変動と症状に関係があるのではないかと言われています。
月経周期について
月経が始まった日から次の月経が始まる前日までの日数を、月経周期といいます。だいたい25~38日くらいで、もっと短い人もいれば長い人もいます。この経過の間、脳下垂体や卵巣からでる複数のホルモンが関わっています。
■月経周期は以下のような流れになります。
脳下垂体からFSHが分泌
→卵巣の中の卵胞が成長し始める
→発育した卵胞から卵胞ホルモンが分泌、子宮内膜が厚くなっていく
→卵胞ホルモンの分泌がピークになると、脳下垂体からLHが分泌
→卵胞が刺激され、排卵
→卵子が出て行った卵胞が黄体に変化し、黄体ホルモンが分泌
→黄体ホルモンの刺激で、子宮内膜が妊娠できる準備をする
→受精がないとホルモン量が激減し、内膜が剥がれおちる(月経)脳から出るホルモンで卵巣が反応し、卵巣からのホルモンで子宮内膜に変化が起こり、また卵巣からのホルモンを脳がキャッチしてまた脳からホルモンが出て、卵巣や子宮内膜に変化をもたらすという流れです。
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女性ホルモン
上記の月経周期に分泌される、エストロゲン(卵胞ホルモン)、プロゲステロン(黄体ホルモン)というホルモンのうち、PMDDの症状期間にはプロゲステロンが増加するため、それが様々な不快症状に関わっていると考えられていました。しかし、最近の研究で、脳が女性ホルモン分泌の指令を出すときに脳内の神経伝達物質と連動することによって、不快な症状を引き起こしているのではないかという説が有力視されています。
その時に働きが悪くなるものとして、セロトニンとGABAの存在が知られています。どちらも働きが悪くなると、緊張や不安、抑うつ、イライラ、高ぶりを引き起こす原因となります。
また、PMDDの症状緩和に、SSRIというセロトニンを増やす薬やGABAの働きを高める抗不安薬が有効なことでも、脳と女性ホルモンの連動はPMDDと深い関わりがあるのではないかと考えられています。
※薬を服用している状態でサプリメントなどを飲みたい場合は必ず医師と相談しましょう
セルフケアについて
薬剤の治療もありますが、根本改善のためや、生理前に心身が不安定になってしまうのはある程度避けられないため、セルフケアもとても重要です。
特に「ストレス」「生活習慣」が影響しているため、改善できることをしていきましょう。
- 日記をつける
- 生活リズムを整える
- カフェインを控える
- 食事のバランスを整える
- 適度な運動を心掛ける
- 家族やパートナーなど大切な人には伝えておく
- 気持ちを落ち着ける方法を身に着ける
以下のリンク先ではPMDDのセルフケアについてもっと詳しく解説しているので参考にしてください。
どこを受診するのか
選択肢は婦人科・精神科・心療内科となります。
まず、この3つのどれかに既にかかっている場合はそこに相談しましょう。別の科に行った方がいいなら、紹介してくれて、この後スムーズになるかもしれませんし、そこだけで済むなら一緒に処方してもらったりできます。
どこにもかかっていない場合は、婦人科がオススメです。心療内科や精神科は予約がないと受診ができないケースがありますし、かかったことのない人だとハードルが高いかもしれません。また、症状がそこまで重くない場合、低用量のピルの処方で済む場合もありますし、月経について悩みがある場合は特に婦人科で相談しておくことも重要です。
治療法
薬物治療・漢方・カウンセリングなどを組み合わせることが多いようです。
薬物治療
薬物治療では、SSRIというセロトニンを増やすお薬を用いることが多いようです。また、服用する期間も人によって異なることが多く、先生とよく相談する必要があります。
まとめ
PMDDについて紹介しました。PMSの女性のうち、3〜8%が重症と言われていますが、ほぼ重症のPMSがPMDDに該当するとも言われています。月経前から社会生活・人間関係を維持するのが困難・苦痛で、チェックリストの項目も当てはまってしまう場合は、早めに受診して診断の確定や薬の処方などをしてもらいながら、症状を軽減させていきましょう。
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